折に触れて訪れる皇居(旧江戸城跡)の東側を中心に歩いたお散歩記録です。

旅の始まりは平川門

皇居を観光する人がまず訪れるのは大手門です。けれど今回はあえて外して平川門から入城しました。東京メトロ東西線の竹橋駅直結なので、複雑な地下道でつながっている大手町より出口が簡潔で迷うことがありません。

平川門はかつて江戸時代、「不浄門」とも呼ばれた通用門です。
江戸城内で亡くなった人がこの門から市中へ出ていったことにちなみます。
大奥の女性たちが御遣いのために江戸城から外出する際にも使われました。

皇居の東御苑と二の丸庭園は無料で散策ができますが、月曜日と金曜日が休園です。
うっかり知らずに訪れると門は閉ざされていますのでご注意くださいね。(経験者は語る)
IMG_8449.jpeg 3.28 MBと、そのまえに腹ごしらえです。
竹橋の駅直結の「パレスサイドビルディング」にはオフィスワーカーのためのレストラン街が広がっています。なかでもリーズナブルでお財布に優しいお店を訪れました。
讃岐うどんが美味しい「杵屋」です。
チェーン店なので全国にあると思いますが、ここは景色が良いのです。
お昼時は大混雑で行列必至なのでその時間帯を外して利用するのがおすすめです。
IMG_8445.jpeg 3.1 MB杵屋の最も奥の窓際の席を陣取ります。
目の前の窓越しには皇居の内堀と石垣、その奥のこんもりと茂る杜が見渡せます。
まるで額縁に切り取られた風景画のようです。
IMG_8433.jpeg 3.29 MBコシのあるさぬきうどんを「冷やし」で注文。
トッピングにイカ天と狐のお揚げさん。
「6」が付く日は大盛り無料ということを店を出てから知りました。
でも「普通盛」でお腹がいっぱいになりました。
歯ごたえがあるのでよく噛むからでしょうか。
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皇居内の秘密の花園へ

おなかを満たしていざ、行動開始です。
まずは二の丸庭園をめざしました。
今まで、東御苑は何十回と足を運んだのですが、二の丸庭園は素通りしていました。
入り口も隠れているように目立たないのでわかりませんでした。
盲点です。
花菖蒲が見られる庭園を探していてSNSで発見しました。
長い長いアプローチを抜け、木立が開けるとそこには池のある庭園が広がっていました。
八つ橋の左右には湿地に花菖蒲が今が盛りと咲き誇っていました。
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白・紫・薄紫の色合いが涼しげです。
森の奥には大手町のビル群。

IMG_8629.jpeg 5.29 MB森に囲まれて周辺からは隔離されており、ここを知る人がどれだけいるのでしょうか。
外国人観光客もちらほらと見受けられましたが、庭園全体は人も少なめで開放感があります。
IMG_8696.jpeg 6.75 MB陽ざしが強い分だけ、木陰を吹き抜ける一陣の風に涼を感じます。
木洩れ日が風に揺らぎ、路に影を落とします。
さあ、ここから先の「汐見坂」から東御苑に向かいます。
汐見ということからも推察できるように、この坂の向こうは江戸時代以前、「日比谷入江」と呼ばれる海が広がっていました。
徳川家康が江戸に幕府を開府し江戸城を拡張する際、土地の低い方は海を埋め立てて江戸城の敷地に取り込んでいます。元々はは長禄元年(1457)太田道灌が高台に城とは呼べないほどの館を築いたのが江戸城の始まりです。
ですので、この写真のように手前の石垣は一段と高く、埋め立てた奥の石垣が低くなっているのです。
IMG_8712.jpeg 2.29 MB東御苑への道のりも初めてでした。
何度訪れても飽きることのない魅力が旧江戸城にはあります。
新鮮な景色を眺めながら散策を続けました。

重要文化財のレトロ建築を見学

東御苑から大手門を抜け、「日本の道百選」に選ばれた内堀通を日比谷方面に舵を取ります。
内堀と石垣の古き良き風景を右側に、明治以降に立ち並ぶオフィスビル群を左手に進んでいきます。

余談ですが、東京都心の「番地」の付け方は皇居に近い方から番号を振るそうです。
ですので、今回の旅の起点となった竹橋のパレスサイドビルは「一ツ橋1-1-1」です。
そして出口となった大手門からすぐのところにある「パレスホテル東京」の住所は「大手町1-1-1」。
これから向かう日比谷公園の目の前にある帝国ホテルは「内幸町1-1-1」です。
ゾロ目番地のなかでも「1-1-1」が付く住所はまさに一等地だったのです。

日比谷公園に至る途中、内堀に面して「明治生命館」があります。
重要文化財として内部もレトロな状態で保存され、去年2022年には建物内に美術館をオープンさせました。
住所は丸の内2丁目1-1です。
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静嘉堂が移転オープンしてから一度展覧会を鑑賞しました。
明治生命館のアトリウムロビーを活用して美術館の入り口とし、その奥には岩崎財閥が所有する数々の国宝や重要文化財をはじめとする古美術が収蔵されています。

D4A843EC-35CB-4AA1-8F9F-B7160F65DD26.jpeg 1.35 MB今回は美術館には入らず、明治生命館の無料見学ができる建物2階へ上がります。

上がるときに警備員さんに呼び止められて少し焦りました。
オフィスへ向かうエレベーターは部外者立ち入り禁止。私が乗ろうとしたエレベーターは関係者用でした。警備員さんから見学者用のエレベーターを案内されました。
レトロな年季の入ったエレベーターです。
9229D1E6-BA65-4D67-8133-75529E9246EA.jpeg 1.31 MB建物は現在でも明治安田生命が営業を行うオフィスとして使われているため、ロビーでは静かにするように注意書きがありました。
8CB67ECD-995F-430B-8C4D-435B41E94929.jpeg 1001.48 KB0B14EF5B-074F-48D6-9A61-9D1F3B0DC1AF.jpeg 1.16 MBD539F2F9-A73C-4E62-A22B-59E0C0E8DCB4.jpeg 1.05 MB美術館には入らなくても、ミュージアムショップには入れます。
私がこの美術館で「よだれが出るほど」大好きな国宝があります。
それが、「曜変天目茶碗」です。
中国伝来の天目茶碗は日本に3点ありますが、その3つともが国宝に指定されています。
美術館が所有する茶碗はまるで宇宙空間を覗いているような、筆舌に尽くしがたい妖艶な美しさを誇ります。常設展示されており、いつでも逢いに行けます。
ミュージアムショップではそんな茶碗の様々なグッズが販売されています。実物大の大きさで、茶碗を手に持つ事ができ、予想に反して大人気、話題彷彿だったのです。
茶碗の「ぬいぐるみ」が去年売り切れて、長らく予約販売していましたが、無事再販されていました。
(買おうかどうか、真剣に悩み中です)
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今回は街歩きなので、茶碗についてのうんちくは割愛させていただきます。

百合の香りに満ちている花園へ

明治生命館でしばし暑さをしのぎ、クールダウンしたところで再び内堀通りに出て日比谷公園に向かいます。

日比谷公園はバラの時期も過ぎて百合の花が各種随時見ごろを迎えていました。

IMG_8530.jpeg 3.3 MBIMG_8549.jpeg 3.35 MB一面に百合の香りが漂っていました。

天空のテラスから鳥の目で眺める景色

夏に向かって咲き誇る花々を愛でた後、今歩いてきた道を空中から俯瞰してみようと、
日比谷公園目の前に建つ東京ミッドタウン日比谷へ向かいました。
写真の中央にそびえたつ高層ビルです。
6階テラスが息をのむほどの絶景なのです。
(写真右側に映る茶色のビルが帝国ホテル本館です。もうすぐ取り壊されて新しく高層ビル化する計画です)
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東京ミッドタウン日比谷にはTOHOシネマがありますが、その映画館より上に向かうエスカレーターを乗る人は少ないです。
だれでも立ち入ることができるので、映画鑑賞の前後にでも息抜きにテラスに上がってみてください。
こんな絶景です。

写真の奥に広がるのは皇居です。

IMG_8597.jpeg 2.23 MB午後は西日が射して、夏にずっといるのは熱中症に注意です。
おすすめが午前中と、黄昏時から夜にかけてです。
皇居が真っ暗になる分、広がる都心のビル群の夜景が一層際立ちます。

ドラマのロケ地、あの景色はどこで撮影されたのか?

後日、竹橋で気になっていたパレスサイドビルを訪れました。
このビルの屋上にどうしても行きたかったからです。
平日の昼時にしか開放していない絶景空中庭園があるのです。
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テレビやCMでもロケ地として使用されるため、既視感のある人もいらっしゃるのではないでしょうか?
私が認識するだけでも、こんな作品で登場しています。
・「BOSS」天海祐希さんが主演
・「コンフィデンスマンJP」長澤まさみさんが主演
・「不毛地帯」唐沢寿明演じる壹岐正が入社した近畿商事のロビー
記憶に新しいのは
・「ラストマン」福山雅治さん、大泉洋さん出演。

刑事ドラマではよく「警視庁」の屋上として撮影されるそうです。
IMG_8822.jpeg 2.8 MBお昼休みの時間帯に、ビルで働く人の息抜きのために開放されています。
部外者でも訪れることができる平日限定の絶景です。
ビルの足元にはあの「平川門(別名:不浄門)」が見下ろせます。
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徳川家康が見た風景を鳥観図のように一望できる絶景の穴場です。

写真手前の旧江戸城跡と、写真奥の大手町から丸の内の高層ビル群の対比が、まるで時代を分け隔てているかのように見えます。

この風景が「日本の道100選」に選ばれた要因です。
内堀通を挟んで過去と現在の時代が拮抗する稀有の景色です。

今回の散歩にかかった費用はゼロ円!!!
ただし食事代は杵屋のうどん530円。
交通費はぜんぶ歩いたのでゼロ円。
見学料は無料なのでゼロ円。
旅の付加価値、プライスレス。