偶然に知った『奥能登国際芸術祭』
能登半島の先端の珠洲市で開催している会場を、金沢駅からの日帰りバスで巡ってくれると知り、早速金沢旅行を計画して行って来ました。
利用したのは「すずアートバス Eコース」。金沢駅発着は土日のみ運行。
奥能登国際芸術祭|すずアートバス
最初は【F27】おはなしの駅すず SUZU OHANASHI STATION
作家の佐藤悠さんから展示中の作品について直接お話が聞けました。
偶然そこに居合わせた人たち数人が1つのチームとなり、それぞれがイメージする「おはなし」のキーワードを作家さんが書き留めていくことで、不思議な「おはなし」が完成するそう。
「おはなしを完成させるためにあえて誘導はしない」「聞いたままを書き留める」
駅のホームに掲げられたいくつものおはなしを書き留めた布を眺めながら、おはなしを作った人たちを思い浮かべてみる。
『奥能登国際芸術祭』の会場は、人口減により廃校になってしまった小学校や保育園が多く使わせていました。訪れたのは、旧上黒丸小中学校。
【J43】あかりのありか《のと》 AKARI-no-ARIKA, NOTO
童話作家さんと造形作家さん、そして地元の子ども達による作品。まずはお話を考えて、そのお話の場面を組み立てていく。
会場になっている小学校の理科室には、たくさんのお話の場面が並んでいる。
これらのお話を集めて、一冊の絵本を作ることを計画しているそう。読んでみたい。
【J44】祈りのかたち Vessel of pray
地域の方々が思い入れのある古着を持ち寄り、その古着を使って布の器づくりをして創り上げた作品。それぞれに想い出を語り合いながらの素敵な時間になったとのこと。
器の形に吊り下げられているのは、ひとつひとつにそれぞれの想い出が詰まった手作りの小さな器。
【47】ボトルシップ Bottle Ship
棚田の真ん中に作られた作品。
バスを降りて歩いていくと視界の先に見えてくる作品の赤色が青い空と森の緑に映える。
珠洲の海岸に流れ着く様々な漂着物から着想を得て、まずは小説を書き上げ、作品を制作したとのこと。
この土地に置き去りにされたもの…それを静かに見守る仏像たち。
【A03】潮騒レストラン Shiosai Restaurant
珠洲の食材を存分に使用したメニューが提供されるレストラン。ヒノキの木を圧縮し、鉄骨のような 形状をした世界発となる構造体を主軸にした建物は、1つの作品でもある。
「年に何回あるかないかだよ」と地元の方も話すほどの穏やかな海。濃い青が美しい。
【A02-1】「光の方舟」"Ark of Light"
この芸術祭では、各所に「民藝」をモチーフにした作品が展示されていた。ひと昔前は日常生活の中に当たり前にあったけれど、忘れ去られて置き去りにされた道具たち。
【A01】時を運ぶ船 The Boat Which Carries Time
目の前の海外にいくつもの塩田が広がる会場の旧清水保育所。保育室の中央に配置されているのは塩田用の砂取舟。芸術祭の視察に訪れた塩田千春さんは、奥能登の製塩業を守り続けた方のエピソードと「塩田」繋がりのご縁で、この土地に塩づくりをテーマにした作品を展示すると決めたそう。
砂取舟から壁や天井まで張り巡らされた赤い糸は、塩作りの技術を守ってきた人たちの記憶や歴史を表しているとのこと。窓から差し込む陽射しが温かい空気で包んでいた。曇りの日、雨の日はまた違った表情を見せているのだろうか…
奥能登の景色を眺めながらその風景の中に配置された作品を巡る
右奥に見えるのは、自然が創り出した通称「ゴジラ岩」
【A06】自身への扉 Door to Yourself
【A07】風と波 Wind and Waves
【A08】太古の響き ANCESTRAL ECHOES
【B11】Infinity 41.42.43
45度の角度で3か所に配置された作品は、太陽光の反射を意識して展示されているとか
【B13】アイオロスの広場 Aeolus' Square
中央に置かれたピアノの鍵盤に繋がったワイヤー。風が吹くと、自然の音が奏でられるということ…指で弾いてみると、微かな音が響く。野ざらしに置かれたピアノは侘しさを感じる。
【B10】TENGEI
公園内2か所に設置された作品。風の強い奥能登地域の自然の力を使い、風が吹くと筒の中に風の音が響き、静かな音色を奏でていた。
【C15】おもちゃ Toy
旧保育所に展示されたセラミックの積み木たち。かつて賑やかな声で溢れていた園庭。
室内の積み木は、来場者が自由に積み直して遊ぶことができる。作品は、期間中、作り直され、壊され、また作られて…常に形が変わっていく。訪れた誰もが作者になれる。
【C16】遠のく Away
『奥能登国際芸術祭』は、地域の方々の温かさも感じられる場所だった。作家がしばらくそのエリアに住み、地域の方と一緒に作り上げた作品も多く、愛着の深さも感じた。
また、会場の多くに廃校になってしまった元小学校や保育所が使われていたり、以前生活の中で活躍していた道具などの民藝がテーマになっていたり、今と昔を対比しながら鑑賞し、懐かしい気持ちやこれまでの姿を残していきたいという気持ち、様々な想いがわきあがる1日となった。
この芸術祭をきっかけに知った珠洲市。また訪れてみたいと強く思える場所なりました。