鎌倉を題材にした小説や漫画、映画たちの舞台をめぐる鎌倉文芸散歩の後編です。
前編の「栞子・ポッポ編」はこちら
3. 海街diary
■佐竹稲荷神社
鎌倉駅西口から前編で紹介したスターバックスを抜け、源氏山方面に歩いて行ったところにある神社。住宅地の中に突然現れる異空間です。すずとチカが佳乃の彼である朋章の密会を目撃した現場として登場。
チカは佳乃がトラブルに巻き込まれるのではないかと心配しますが、佐助の狐は人を騙すような狐じゃないから大丈夫だ、と言って自らを落ち着かせています。
鳥居のたもとや、境内の中にある祠。至る所に無数の佐白狐が並べられています。小さいものは1対1500円で奉納することができます。子供にいじめられていた子狐を助けたところ、親狐から薬草を授かったことから1対の白狐を供えるようになったそうです。この伝説からも佐助の狐は人を騙すようなことはしないいい狐だとわかりますね。
■極楽寺駅界隈
すずたち4姉妹の住む家は江ノ電の極楽寺駅周辺にあります。そのためこの駅周辺の景色は漫画の中で度々登場します。
江ノ電を跨ぐ橋を渡るとある導き地蔵尊。急な雨に見舞われたすずがここを通りすぎて家に向かうシーンが描かれています。映画ではすずを演じる広瀬すずさんがここで雨宿りをしていました。
長谷駅方面に降っていく切り通し。長女の幸とすずが力餅家から家路に向かうシーンで登場します。この通りは観光スポットも多くてたびたび観光客と行き交います。
漫画で度々登場する力餅家。白い暖簾が印象的です。チカが箱入りの福面饅頭を全部食べてしまったなんてエピソードも。絶えず買い求めるお客さんで賑わう人気店です。
★力餅家の情報はコチラ 切り通しの通りを線路方向に曲がると御霊神社。
神社に向かう階段と境内の間に江ノ電が走ります。
脚を切断してサッカーを断念する同級生が、負けずに前向きに生きる意思を語る印象的なシーンが描かれています。
御霊神社、社殿の前の桜も見事なのですが境内の中は撮影禁止のことで撮影は控えました。
神社のすぐ脇を江ノ電が通っていきます。紫陽花の咲く頃には紫陽花の中を走る江ノ電が撮れる絶景スポットになり多くの鉄道ファンが訪れます。
4年前の紫陽花の季節に撮った写真です。ヘタですが…
長谷駅に向かう途中、星の井通りの交差点からは湘南の海がすぐそこに見えます。道路の向こうにすぐ海!と言う光景は鎌倉高校前駅付近の日坂<冒頭の海街diaryの漫画の表紙の坂です>が有名ですが、ここもなかなかのビューポイント。海に誘われてしまいます。
というわけで湘南の海でしばし休憩。ニュージャーマンのかまくらカスターをいただきました。漫画の中で四姉妹も美味しく食べています。季節限定のさくらクリーム。ほのかに桜餅のような香りが口の中に広がって春を感じさせてくれました。とんびが上を舞っているので急いで食べないといけません。
★鎌倉ニュージャーマンの情報
■源氏山公園
鎌倉駅の北西、鎌倉きっての桜の名所、源氏山公園。先ほど紹介した佐助稲荷からも近い場所にあります。
鎌倉には谷戸(やつ)と呼ばれるひだのような谷がいくつもあります。同級生の風太が山形から来たすずをとっておきの桜の穴場である谷戸の奥に連れてきて、一気に自転車で駆け下りていくシーンが描かれています。
高くはないですが山の上ということもあってか、ここの桜はまだ三分咲きほどでした。
ちなみに映画ではこのシーンは沼津の運動公園の桜並木で撮られています。
源氏山はちょっとしたハイキングコースにもなっています。化粧坂を鎌倉駅方面へ降っていくと麓の集落も一望できます。
ハイキングというので歩道が整備されているのかと思いきや結構難所があります。気をつけないと滑り落ちます。
■海猫食堂<キネマ堂>
なんとか麓まで降りるとすぐ鎌倉一の繁華街、小町通りに出ることができます。
小町通りの奥に入った一角にある鎌倉キネマ堂は海街diaryを知る人なら知らない人はいない「しらすトースト」の元祖。すずの父が作ってくれた思い出の味です。ただ残念ながらコチラのお店はコロナで休業中。また再開したら元祖の味を試してみたいです。
というわけで自宅で作りました、しらすトースト🥪
カリッとしたトーストにほんのり磯の香りと塩味がして、海の味がしますね!
4 タイヨウのうた
こちらは映画作品。色素性乾皮症で太陽の光にあたれない天音薫。こっそり家から覗き見していた少年に夜のストリートライブで出会ったことで運命が大きく変わってゆくというラブストーリー。主人公はシンガーソングライターのYUI。主題歌のGood-bye daysは今も彼女の代表曲となっています。
彼女の家のある七里ヶ浜。このバス停の前で友人と待ち合わせてサーフィンに行く孝治の姿を薫は高台の家から見ていました。より見やすいようにこっそりバス停の位置を変えたりもしています。
七里ヶ浜バス停のすぐ近くの踏切。まだ初々しい感じのYUIが手で頬を引っ張られながら告白を受けるシーンが印象的。ここで孝治と薫がファーストキスをします。
最後に薫が住んでいた家に登る階段から海を眺めました。映画のようにバス停は眺められませんでしたが、厚いカーテン越しにしか見ることができなかったこの景色。薫は孝治と一緒に太陽の下でいつまでもこの景色の中にいたかったんだろうな、と感じました。
5 おまけ
日坂のすぐ近くの鎌倉高校前駅。地味に駅名標がスラムダンクだったりします。ちなみにこの駅は1953年にこの名前に改称されるまでは日坂駅でした。それだけこの坂は町のシンボルと言える存在だったんですね。
鎌倉を1日かけて文芸作品にまつわる場所を巡ってきました。今回は4作品を一気に巡りましたが、ひとつの作品の世界にもっとどっぷり浸ってみるのもいいかもしれません。
家でもうひとつあるかまくらカスターを食べながら海街diaryを読んで鎌倉旅行の余韻に浸りたいと思います。